結晶


窓越しに見た。
ゆっくりと、
けれど着実に積もってゆくそれを。
白に閉じられていくのが怖かったのか、
僕は窓を開けてベランダに積もるそれを

ぐしゃり、

と両手で握り締めた。
室内で温まった手は徐々に熱を奪われて、上手く動かなくなるくらい冷たくなる。
ふわふわとした美しい結晶の集合は、無理矢理固められて氷のようになった。

僕が愛したはずの奇麗なもの。
なのに、奇麗過ぎるものが今はとても恐い。
きっと、するりと僕の両手から逃げてしまうから。

君のように。

触れようとした、その時ばかり。

僕は冷たさに耐えられなくなって漸く雪から手を離した。
固まった雪はザクリと音を立てて地面に落ちる。
手を見たら赤くなっていた。
冷えきった両手は痛みすら伴って。

奇麗過ぎてとても恐い。
例え今は触れる事ができても、
明日になれば嘘みたいに幻みたいに、消えてしまうんじゃないかって。


僅かな残像だけを、残して。