それは蒸し暑い夏の日で


青の世界から覗く光は微量の閉塞感を、地面に反射したその光は微量の解放感を、

そこに立ち尽くすあたしは何処までも無様だ。

映し出されていた眩しすぎる太陽。
だらりと肌を伝う汗。
抱き締めた言葉と一緒に飲み込んだ酸素。
それにすら湿気を感じる。
そしてその鮮やかすぎる空と、暑さに混じる夏の匂い。


少しニヒルな夏風につられて、白い野良猫が「にゃあ」と鳴いた。


それだけで十分だった、
それだけが総てだった。

それは蒸し暑い夏の日で、
それはそれは幻想的に美しく、

広い青の世界にあたしは独りだった。



でも。



貴方の事なんてどうだって良かったの。
心に吹き溜まる痛みなんてどうだって良かったんだ。
目の前の現実が、真実かなんてどうだって良くなってしまったんだ。


蝉の声と飛行機の音、
青の世界にあたしは独り。


それだけの話なんだ。
きっと。