月の光は、
総てを見ている。
月光
その細波は、水面に反射月明かりは、白い砂浜は、
少しくらい僕たちを美しく見せてくれているだろうか?
「もう、終わりね」
「…うん」
波が来ないギリギリの浜辺に僕たちは横たわる。
2人並んで。
ボロボロになった服、君のお気に入りだったスカートも所々破けてしまっていた。
「ねぇ」
「ん?」
君は唇を緩めて溶けるみたいに微笑んだ。
もう逃げられない事は君も気付いているの?
「これから何処へ行くの?」
僕たちは何処にもいてはいけない。
「僕たちだけの世界」
「楽園?」
腕を絡めてキツく君の右手を握った。
気温は肌寒いくらいなのに、君の手は温かい。
「それは無理だよ。許されない事をしたから、でも」
「でも?」
右腕に感じる金属の冷たさと君の温かさが、やけに皮肉めいている。
「君と一緒なら…そこが、楽園だから」
「…そうね」
繋いだ手をそのままに、
「そろそろ行こうか」
「うん。」
僕は君を抱き締めた。
君は少し体をずらして、僕の心臓に、君の心臓を重ねる。
朝になれば僕たちを追ってきた人たちが、見つけてくれるだろう。
僕は引き金を引いて、ゆっくりと焦点を合わせる。
「ねぇ、」
そして終わりの見えない程の口付けを、抱擁を、
「だいすき」
「―――知ってるよ」
月の光は何も語らない。
ただ、寄り添うだけ。
だから総てを見ているのだ。