色メガネ


世界は汚れている。
世界は腐っている。

そんな風に見えるのは僕だけなのだろうか。
ぼんやりそんな事を考えていると、変な外装の店が目に入った。
何故だか入ってみたい衝動に駆られた。

「いらっしゃいませ」

中は雑貨屋みたいなところだった。

「何かお求めですか?」

いや、寧ろよってみただけだし。

「何もない?そんな事は無いでしょう?」

ありますよ。

「そうですか?あ、素敵な眼鏡をお持ちですね」

はぁ、どうも。
つか唯の黒フレームの眼鏡なんですけど。

「いやいや、とっても素敵ですよ。良かったら売ってもらえませんか?」

5250円の眼鏡を?
変な店だな。

「その十倍の値段で買い取っても構いませんよ、珍しい色メガネですからね」

こんな眼鏡で良いなら売るけど。
色メガネって、だから唯の黒フレームだって。

「透明も立派な色ですよ、今代金と代わりの眼鏡をお持ちしますね」

変な店。
店員はカウンターの奥に行き封筒と白い箱を持ってきた。

「眼鏡を変えると気分も変わりますよ」

店員は白フレームの眼鏡を取り出した。
そんなもんかねぇ。

「えぇ、そんなもんです。掛けてみて下さい」

店員はすかさず鏡を取り出した。
ふぅん。悪くないな。
少し明るい印象になった気がする。
視界も明るくなった気がする。
この店も少しはましに見えるかも。

「でしょう?」

にっこりと店員が笑った。
そろそろ帰るか。


「またのお越しを…」









色メガネ⇒色付き硝子を用いたメガネ。転じて、先入観や感情に支配された観察。